祈りの回廊

特別講話

「伽藍復興と千三百年の想いを未来へ取り次ぐ」 薬師寺
管主/加藤 朝胤 師

ダイジェストムービー

─ 令和5年は約110年ぶりの大修理の完了を祝う国宝・東塔の落慶(らっけい)法要(※1)がありました
─ 令和5年は約110年ぶりの大修理の完了を祝う国宝・東塔の落慶(らっけい)法要(※1)がありました
皆さんが自分ごとのように喜んでくださいました。解体修理というのは単なる延命ではありません。薬師寺の東塔は創建から1300年、ずっと建っています。日数に換算すると48万日。48万日毎日誰かが、祈りや願いを、あるいは苦しみや悲しみを胸に、手を合わせてきました。そうした思いが柱や壁にしみついています。それを未来へお取り次ぎすることが、私たちの役目であると思っています。
─ 東塔・西塔を特別公開中ですね
2024(令和6)年1月15日まで国宝東塔落慶記念として東塔・西塔を特別公開し、初層内に入っていただけます。塔はお釈迦様のお墓ですから、外から拝むのが本来の姿ですが、せっかくの機会ですので、一人でも多くの方にと思っております。それぞれの初層に納められているのが中村晋也氏作「釈迦八相像(東塔因相(いんそう)・西塔果相(かそう))」です。釈迦八相というのは、お釈迦様の生涯を表した八つの場面。東塔には「入胎」「受生」「受楽」「苦行」、西塔には「成道」「転法輪」「涅槃」「分舎利」がお祀りされています。参拝された方々は「迫力がありますね」と驚かれます。
─ 薬師寺でのお写経勧進(※2)も55年目を迎えるとか
お経というのは四角い漢字が並んでいて難しく見えますが、とてもやさしいものなのです。分かりやすい教えがいっぱい書いてあります。「原因があって縁が働いて結果が生まれる。だから奇跡はない」ということをおっしゃったのがお釈迦様。そのことが書いてあるのが、多くの方がお写経してくださってきた般若心経です。夏休みの宿題で朝顔の観察というのがありますが、あれはその教えを実践する科目ですよ。種をまいて、水と太陽の光という縁が働いて成長し、花が咲き、種という結果が生まれ、また次の連鎖へと続きます。
塔の前で1300年前の方々のことを思い返し、空の色、その場に吹く風や聞こえる音を、自分の目で、肌で感じることはとても大切なことだと思います。『祈りの回廊』を読み、ぜひ奈良へ足を運んで実践してみてください。

(※1)2023(令和5)年4月21日~25日に厳修
(※2)薬師寺では「般若心経」「薬師経」「唯識三十頌」のお写経ができる

プロフィール

薬師寺/管主 加藤 朝胤(かとうちょういん)師

1949年愛知県生まれ。23歳の時入山し、高田好胤和上に師事。日本大学法学部卒業。龍谷大学文学部佛教学科卒業。

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